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ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』

Text & photo by Yoshimi Yoshimoto (Design Studio Paperweight)

2017.06.07

没後36年が過ぎ、ますます評価の高まる監督・脚本家・俳優のジャック・タチ。彼が作った1953年の映画『ぼくの伯父さんの休暇』はカンヌ映画祭国際批評家連盟賞、ルイ・デリュック賞に輝き、それまでには無い、新しい喜劇として評判を呼び、風変わりな主人公ユロ氏は今なお人気を誇る不朽のキャラクターとなりました。

ユロ氏についてジャック・タチは次のようにコメントしています。「ユロ氏のような人物は人にまともに相手にされない。ユロ氏にはだからちょっと悲しい、切ないところがある。ユロ氏には"ファン"はいない。変わり者で、友達みたいな奴で、街中を歩いていても、誰もサインをしてくれって殺到はしない…」ジャック・タチ扮するユロ氏は端から観ていると楽しいけれど、傍にいる大人にとっては迷惑な困った人。でも、彼には悪気は無くてあくまでもとぼけた味わいがあり、そこが現在でも愛される理由の1つなのでしょう。

1958年の映画『ぼくの伯父さん』は、カンヌ映画祭で審査員特別賞、アカデミー賞外国語映画賞に輝きました。斬新なデザインが施されたセットに計算された美しい色使い。1950年代当時のモダンな世界観を織り込むだけでは無く、変わりゆくパリの景観に対しての皮肉も巧みに込められていました。

飄々とパリの街に現れる、呑気で心優しきユロ氏。単純明快で、老若男女、古今東西、誰にでも楽しむ事が出来るように作られています。セリフを極力抑え、その分動作や仕草でストーリーを表す方法は、ジャック・タチがパントマイム役者出身だからこそ出来たのでしょう。彼の動きを見ているだけで、自然と笑いがこみ上げて来ます。

その後に作られた『プレイタイム』は、膨大な制作費と3年の歳月をかけた超大作でしたが、あまりにも斬新だったため興行的に失敗し、同じ映画監督のフランソワ・トリュフォーに擁護されたものの、タチは莫大な負債を抱える事になりました。そして1971年監督・脚本・主演作品『トラフィック』が、ユロ氏最後のスクリーン登場となりました。

ジャック・タチはその後、スウェーデンのテレビ局に依頼され、1973年に『パラード』を監督し、再評価を受け、全作品に対してセザール賞が贈られましたが、1982年11月4日に亡くなりました。

「僕は人が生きているところを見るのが好きなんだ。僕は人の会話を聞き、その人の人柄を表す無意識の癖や、ちょっとした細部、有り様を観察する。僕はメッセージを伝えようとは思わない。ただ、人や家族、子供やサービス等、いよいよ平板化し、機械化されてゆく世界の中の、ありとあらゆる種類の小さな問題に興味があるんだ…」 ジャック・タチ

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